半世紀ほど前に消えてしまった、木製の醸造用容器を使った仕込みにより生まれる特別なお酒です。
東京、奥多摩の銘酒「澤乃井」を醸す、「小澤酒造」は、創業元禄15年、西暦1702年の超老舗蔵です。
「秩父古生層の岩盤を掘り抜いた洞窟の奥から湧き出づる仕込水、連なる山々と豊かな緑、澄み切った奥多摩の空気、選りすぐった原料米、磨き上げた技。 それを結集して一滴の美酒として仕上げるのは、全社挙げての真心と研鑽努力である」というのが澤乃井の信条です。
伝統に胡坐をかくことなく、新しい設備の導入や、斬新な試みにも挑戦している素晴らしい蔵元です。
2019年、新たに23代目に代替わりし、新しいスタートもきりました。
そんな小澤酒造は、江戸時代から昭和初期まで行われていたものの、ホーロータンクの普及により消えた【木桶仕込み】を桶作りから始め、2003年から酒の仕込みを開始しました。
木桶仕込みは、微生物が木を介して呼吸をしたり、木肌に棲みついたりすることから、人の技術だけでは生まれ得ない、木桶特有のなめらかで澄み切った豊麗な酒が出来るのです。
その使用している“木桶”。 なんと! 当店がございます、ここ【大阪・堺市で生まれたもの】なのです!!
堺は歴史的に鍛冶職人が多く、木材を削る上質な刃物が出に入ったこと、吉野杉が隣県奈良から、竹は京都から調達でき、灘と伏見という日本酒の2大生産地も近いことなどから、醸造用の大桶作りが栄えたのだそうです。
しかし、今や後継者不足、使用する道具を作る職人もほとんどいなくなってしまい、木桶仕込みをする酒蔵も少なくなり、大桶を作る桶屋さんも全国でもごくわずかになってしまったのだそうです。 そのひとつが堺市の「藤井製桶所(ウッドワーク)」さんです。 ・ ・ 最初の仕込みから16年。 樹齢300年、蔵の近くの八幡さまの鎮守の森にあった杉で出来た、大事に使ってこられた木桶も今年2019年に修繕を依頼。
堺から届いた木桶を再び輸送し、一度ばらして、削って、また組み直しをされたそうです。
従業員皆が見守る中、新社長が底板に「平成三十一年修繕」と書き入れた新品のようになった木桶。
その仕込みから造られるお酒は沢山は出来ません。
酒が繋いだ木の命。 まさに特別なお酒でございます。
かつて桶、樽の産地だった大阪の堺市で唯一の桶屋さんによってリメイクされた木桶で仕込む第一号の新酒でございます。
私はこのお酒に特別な感情を抱かずにはいられません。
このお酒を通じて少しでも「ものづくり」としての愉しみも感じて頂けましたら幸いです。
どうぞお試し下さいませ。
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